日本の中小企業に多い同族経営
法人税は、中小であるか大企業であるかを問わず、一律で30%の税率で課されます。総収入(売上収入、土地等の譲渡による収入、利子収入など)から総費用(売上原価、販売費、一般管理費)を除いた利益に、この税率をかけて算出されるものが法人税です。
しかし例外もあります。資本金が1億円以下の相互会社を除く法人のうち、年間800万円までの部分については、22%の税率がかけられることになっています。
800万円を超える部分については、30%の税率の適用がされます。要するに、少しだけ大企業よりも税制上は優遇されているわけですね。
法人税が一律30%と言っても、実際には道府県民税、市町村民税、法人事業税などが加えて課税されますので、「実効税率」は所得の40%程度になります。
さて、日本国内の法人には多くの同族会社と呼ばれる企業があります。
特に中小企業にこの傾向は多く、その大半を同族経営が占めているといえるでしょう。
税法の観点からすれば、株主の持ち株数の多い順に3位まで、その株主が同族関係者である場合も含めての合計が、会社の資本金の50%以上になっていると同族会社であると定義されます。
同族経営は、税法の厳しい監視下のもとにあります。なぜなら、中小企業では経営者の所得と経営が完全に分けられていない状況が生じる可能性があるからです。
つまり、売上と必要経費の差である利益を同族関係者内でいい様にされてしまっては、正しい課税額もわからなくなってしまうということです。
そのための厳しい二つの規定が、「行為計算の否認」と「留保金課税」の二つです。
「行為計算の否認」の内容は一体どのようなものでしょうか。たとえば、同族会社の行為や計算から、他の企業に比べて税額が少なくなりすぎているような場合、税務署はその行為と計算を否認することが出来ます。そして、適切なやり方で課税標準などを計算しなおすことが出来ます。
次に、「留保金課税」です。同族会社では、大多数の株式の持ち主が経営者とその関係者であるために、利益を配当せずに会社の内部に貯めることがあります。
これは、配当所得税を軽くするためです。しかしこのままでは、個人事業主やサラリーマンに比べて不公平というものです。
そのため、同族会社の各事業年度の留保金が、留保控除額を超えている場合は、超える部分の留保金額に応じて10%から20%の加算をする決まりになっています。これは、通常の法人税に加算されます。
法人税の概要と同族経営に関する規定について、おわかりいただけたでしょうか。